研究報告について

当館では、年1回、自然史あるいは博物館活動に関する研究成果を研究報告として発行しております。
内容の充実をはかるため、皆様からの投稿をお待ちしております。
*投稿者は埼玉県の内外を問いませんが、投稿内容は埼玉県内の情報に限ります。
*初めて投稿を行う場合、投稿予告カードをお送りいただく前に、研究報告編集委員会までご相談ください。

【投稿を検討中の皆様にお知らせ】
★平成28年度から、投稿規定が新しくなりました。
 原稿執筆要領等も含まれておりますので、よくご確認の上、投稿をお願いします。
 *平成30年5月31日 投稿規定一部改正しました。
★令和2年度(研究報告第15号)の編集スケジュールは以下の通りです。
 投稿予告カード受付締切 8月31日(月)
 原稿受付締切(一般) 9月30日(水)
 原稿受付締切(職員および当館外部研究者) 11月13日(金)
 発行予定日 令和3年3月24日(水)

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(2018年6月1日)

★当館の研究報告は、『J-STAGE』(外部リンク)で一部閲覧することができます。

第13号

第13号(2019年3月23日発行)

原著論文

秩父地域産出Paleoparadoxia tabataiの骨端閉鎖状態の比較

北川博道
1-12

国会議事堂の蛇紋岩石材産地の特定-秩父市黒谷の採掘場跡-

井上素子
13-20

秩父市大滝北東部茂萩山周辺の南部秩父帯の地質

武藤 俊
21-32

奥武蔵,蕨山の山頂平坦面にみられるヤエガワカンバ小林分の樹種組成と成因

小川滋之
33-38

埼玉県におけるヤマガタトビイロトビケラ幼虫の生息環境選好性

岩田泰幸・岩田朋文
39-46

埼玉県のミバエ科昆虫相の種多様性評価

末吉昌宏・原 勝司
47-60

短報

埼玉県の暖温帯域の石灰岩地で見出されたリュウキュウマメガキDiospyros japonica
   (埼玉県新産)について

須田大樹
61-64

埼玉県内におけるナガエツルノゲイトウの初記録

上原 歩
65-66

2018年の埼玉県内におけるウマノオバチの追加記録

半田宏伸
67-68

埼玉県久喜市におけるヒナコウモリVespertilio sinensisの出産哺育コロニーの初記録

大沢啓子・佐藤顕義・大沢夕志・勝田節子
69-72

平成30年度研究発表会抄録

73-74

投稿規定

75-78

第12号

第12号(2018年3月23日発行)

原著論文

埼玉県鶴ヶ島市における約2万年前以降の花粉生層序と古気候変動

楡井 尊
1-16

関東地方におけるナラガシワの分布とその生育立地

須田大樹
17-24

短報

自然の博物館の所蔵鉱物資料の再検討 Ⅰ.秩父鉱山産カオリン族鉱物

小林まさ代
25-28

埼玉県におけるタンポヤンマタケOphiocordyceps odonataeの初記録

木山加奈子・須田大樹・半田宏伸
29-32

埼玉県内におけるカマバチ科の初記録10種を含む14種の追加記録

半田宏伸・三田敏治
33-36

埼玉県入間市におけるヒナコウモリVespertilio sinensisの初記録:越冬ねぐらと幼獣の確認

大沢夕志・佐藤顕義・大沢啓子・坂本泰江・長谷川勝・河合久仁子
37-40

報告

ジオパーク秩父のジオサイト再選定方針

井上素子・富田貴夫
41-48

平成29年度研究発表会抄録

49-50

第11号

第11号(2017年3月24日発行)

総説

関東内陸部における中期更新世の古植生および古気候~約78万年前から12万年前~

楡井 尊
1-16
PDFダウンロード(圧縮版 1.8MB)

原著論文

埼玉県長瀞地域における自然銅の分布・産状および採鉱記録

井上素子
17-34
PDFダウンロード(カラー版1.4MB)

埼玉県の温暖帯域の石灰岩地で見出されたビワ―アラカシ群落について

須田大樹・木山加奈子
35-46
PDFダウンロード(1.79MB)

Confirmation of feeding and weather conditions for daytime flight of the birdlike noctule (Nyctalus aviator)

Keiko OSAWA, Akiyoshi SATO, Setsuko KATSUTA and Yushi OSAWA
47-54
PDFダウンロード(1.1MB)

短報

埼玉県内におけるミヤマツヤセイボウ Philoctetes monticola (Tsuneki, 1975)の初記録と産卵に関する知見

半田宏伸
55-56
PDFダウンロード(カラー版 385KB)

埼玉県内におけるムネアカハラビロカマキリ Hierodula sp. の初記録

田留健介・早乙女将史・柳沼薫
57-58
PDFダウンロード(327KB)

埼玉県北本市におけるツシマトリノフンダマシ Paraplectana teushimensis Yamaguchi, 1960 の記録

田留健介・早乙女将史・柳沼薫
59-60
PDFダウンロード(274KB)

埼玉県小川町地域の三波川帯の温度構造とザクロ石の出現温度の検討

横尾彩花・松岡喜久次
61-64
PDFダウンロード(592KB)

資料

新河岸川水系の魚類相

佐藤正康
65-72
PDFダウンロード(992KB)

第10号

第10号(2016年3月28日発行)

原著論文

武蔵野台地北東部,埼玉県和光市における上部更新統の花粉層序

楡井 尊
1-8

埼玉県寄居町用土付近の上部更新統~完新統の花粉化石群集と古環境

楡井 尊・齊藤明彦・小林健助
9-20

タンモウカマアシムシEosentomon brachychaetum(カマアシムシ目,カマアシムシ科)の第2の記録(英文)

中村修美
21-24

埼玉県新産のクゲヌマランCephalanthera longifoliaについて

木山加奈子
25-30

埼玉県都幾川より取水される農業水路を利用する淡水魚類

三浦一輝・泉北斗
31-36

外秩父山地の大型陸生貧毛類(ミミズ)相

柳戸信吾・柳戸拓磨
37-44

秩父地方の大型陸生貧毛類(ミミズ)相

南谷幸雄
45-52

埼玉県秩父郡小鹿野町に分布する秩父帯北帯の付加体を構成する角礫岩

長谷河初男・関根一昭
53-64

短報

長瀞町の採掘坑跡におけるキクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinumとコキクガシラコウモリRhinolophuscornutusの生息確認

奥村みほ子
65-66

近畿南部,和泉山脈で見つかった貫入アルカリ玄武岩について

清家一馬 
67-68

埼玉県におけるヤマコウモリ(Nyctalus aviator)の越冬生態2. 越冬地での集散と動態

佐藤顕義・大沢夕志・大沢啓子・勝田節子
69-74

ナナフシモドキBaculum irregulariterdentatumのオスの記録

田留健介・高野徹
75-76

紅藻類オオイシソウCompsopogon coeruleus (Balibs) Montagneの新産地

橋本悟・中村武
77-80

第9号

第9号(2015年3月24日発行)

原著論文

埼玉県秩父市大滝の洞穴より産出したクマ化石

北川博道
1-20

埼玉県における維管束植物の種多様度の評価

山本薫
21-30

短報

北本市デーノタメ遺跡からコブツメエリダニ Dometorina tuberculata(Aoki, 1984)の発見

楡井尊・中村修美・青木淳一
31-34

埼玉県の新幹線高架におけるアブラコウモリ Pipistrellus abramus の越冬期と出産哺育期の分布

大沢啓子・佐藤顕義・勝田節子・大沢夕志
35-40

地衣類コナフジカワゴケ Toninia sedifolia (Scop.) Timdal の国内第二の産地

田留健介・吉田考造
41-42

資料

埼玉県の鉱山一覧

小林まさ代

第8号

第8号(2014年3月20日発行)

原著論文

青森県下北郡東通村尻労産ナウマンゾウ臼歯化石について

北川博道・坂本治
1-8

都市域孤立林におけるタマノカンアオイの生存適地

勝又暢之・南佳典
9-14

関東地方におけるカマアシムシ科カマアシムシ類の環境選好性(英文)

中村修美
15-18

埼玉県入間市で野生化しているクリハラリス Callosciurus erythraeus の初期防除の試み

重昆達也・御手洗望・金田正人・山﨑文晶・森崎将輝・津田朋香・小野晋・繁田祐輔・繁田真由美・草出諒・田村典子
19-32

ヤマネ Glirulus japonicus (Schinz, 1845) の外部寄生虫

高橋守・湊秋作・三角仁子・岩渕真奈美・饗場葉留果
33-40

短報

埼玉県立自然の博物館所蔵のハイイロウミツバメ Oceanodroma furcata furcata(J.F.Gmelin, 1789)本剥製の再同定

南谷幸雄
41-44

埼玉県におけるヤマコウモリ(Nyctalus aviator)の食性 熊谷市小島における糞分析結果(2012年の記録)

勝田節子・佐藤顕義・大沢夕志
45-48

埼玉県の新幹線高架におけるヒナコウモリ Vespertilio sinensis の越冬期と出産哺育期の分布

大沢啓子・佐藤顕義・勝田節子・大沢夕志
49-52

資料

牧野富太郎(1862~1957)と村越三千男(1872~1947)が日本の植物図鑑の成立に果たした役割―牧野と村越の知られざる関係を探る―

俵浩三
53-62

埼玉県寄居町折原、荒川右岸の中位段堆積層

楡井尊・小林忠夫・斉藤尚人
63-66

キクガシラコウモリ(Rhinolophus ferrumequinum)とコキクガシラコウモリ(Rhinolophus cornutus)の生息確認

奥村みほ子
67-68

埼玉県新産アオキランに関する報告

田留健介・新井裕二
69-70

アリジゴクから発生した冬虫夏草(Isaria femosorosea)について

田留健介
71-72

第7号

第7号(2013年3月25日発行)

総説

埼玉県立自然史博物館の建設と学芸活動

本間岳史
1-14

要 旨 埼玉県立自然の博物館は、1981(昭和56年)にその前身である埼玉県立自然史博物館として建設されてから、30年あまりが経過した。筆者は、埼玉県立自然史博物館の建設に当初から携わり、開設後も長く学芸員として、あるいは管理職員として、学芸活動や博物館運営に携わってきた。博物館勤務を終えるにあたり、秩父鉱物標本陳列所以来の長い伝統を引き継いだ埼玉県立自然史博物館建設の経緯を整理し記録に残しておくことは、今後の博物館の運営や学芸活動を進めるうえで参考になると思われる。
本総説では、自然史博物館の建設を促した自然的・社会的要因、昭和50年代の天然記念物保護行政、昭和50年頃の県立博物館施設の設置状況、秩父鉱物標本陳列所の開設、秩父自然科学博物館の建設と運営、埼玉県立自然史博物館の開館までの経緯についてまとめ、同館開館後の学芸活動の一端にもふれた。

キーワード:天然記念物保護行政、博物館建設の経緯、秩父鉱物標本陳列所、秩父自然科学博物館、埼玉県立自然史博物館

原著論文

埼玉県産出のパレオパラドキシア化石について

北川博道・坂本 治・長谷川善和
15-22

要 旨 Paleoparadoxia は、本邦中部中新統より産出する代表的な哺乳類化石である。本研究では、現在までに報告されている埼玉県産の Paleoparadoxia 化石を整理し、特に代表的な標本である大野原標本・般若標本のタフォノミーの再検討を行った。現在までに埼玉県からは8地点19標本の Paleoparadoxia 化石が報告されている。秩父盆地からは7地点7標本、東松山葛袋1地点からは12標本が産出しており、このうち秩父盆地から産出した6標本と葛袋産 Paleoparadoxia と Desmostylus 各一点が自然の博物館に所蔵されている。
大野原・般若標本のタフォノミーの再検討の結果、大野原標本は埋没後に、般若標本は死後、埋没するまでの間に移動している事を示唆した。

キーワード:Paleoparadoxia、束柱目、埼玉県、秩父盆地、中新統、秩父町層、富田層、白沙層、岩殿層

北本市デーノタメ遺跡における完新統の花粉化石群集

楡井 尊
23-30

要 旨 北本市デーノタメ遺跡において花粉分析を実施し、完新統における花粉化石群集を明らかにし、4花粉帯3亜帯を設定した。古環境・古植生は、ハンノキ属(Alnus)を主体としたマツ属単維管束亜属(Pinus Subgen. Haploxylon)などの針葉樹をともなうやや冷涼な古気候(KD-4帯)、コナラ属コナラ亜属 Quercus(Lepidobaranus)を主体とする温暖な落葉広葉樹主体の古植生(KD-2帯)、山地に中間温帯のモミ属(Abies)、ツガ属(Tsuga)が増加しスギ属(Cryptomeria)も多くなるやや冷涼で降水量の多い時期(KD-2帯)、マツ属複維管束亜属(Pinus Subgen. Diploxylon)が多くアカマツ二次林の増加と栽培植物であるソバ属(Fagopyrum)を伴うKD-1帯へと変遷した。KD-3帯c亜帯の花粉化石群集は、クリ属、クルミ属が多くウルシを伴う点で、人為的影響を強く示唆する。花粉層所学的検討から、縄文時代前期の地層を欠くことを推定した。

キーワード:花粉分析、縄文時代中期、古環境、人為的干渉、ウルシ

関東山地北東縁部における中新世の古地理

武井晛朔・小池美津子・橋屋 功・小澤良広
31-50

要 旨 関東山地北東部の小川盆地とその周辺,および同山地の北側から東側にかけての,児玉地域の丘陵群,比企丘陵とすぐ北の観音山,吉見丘陵,および岩殿丘陵には,中新統が分布する.この地域は,中央構造線をはさんで,三波川帯から領家帯に属する.この論文では,この地域の中新世の古地理とその変遷を検討することにより,関東山地の北側の前橋-熊谷堆積盆地と同盆地南縁の滑川帯の発展過程を考察した.
前期中新世(およそ19~16 Ma)には滑川帯に東方から海が進入し,比企丘陵で堆積がおこった.中期中新世(およそ16~11 Ma)の当初は,海は関東山地内部にまで達し,小川盆地や岩殿丘陵にも堆積がおこり,関東山地北縁では西方の児玉地域からさらに西方まで海が広がった.しかしすぐに,関東山地北東内縁,つづいて滑川帯南部が隆起し,関東山地北縁の海は北方に後退した.また岩殿丘陵の海は,比企丘陵の海とへだてられた.この間の変動が庭谷不整合に相当する.後期中新世(11~5.5 Ma)には海は後退しつづけ,やがて全域が陸化した.こうした古地理の変化に応じて,領家帯と三波川帯の砕屑物供給源としての役割は変化した.なお,関東山地内の秩父盆地の中新世の海は,関東山地北縁部の海とは直接の連絡はなかったとみられる.

キーワード:関東山地北縁,中新世,古地理,古環境,砕屑物供給源,滑川帯,前橋-熊谷堆積盆地

脇水鐵五郎岩石標本に認められた鳥羽源蔵標本

田口聡史・福島美和
51-60

要 旨 脇水鐵五郎岩石標本には、「岩手博物界の太陽」といわれる教育者、鳥羽源蔵が現地で採集し脇水自身が整理を行ったことが確実である岩石標本が3点存在する。さらに、鳥羽源蔵と師弟関係にある江刈小学校長三浦春雄採集の岩石標本も存在している。これらは名勝・天然記念物指定に向けた、地質学的な根拠を提示する証拠資料もしくは関連資料である。鳥羽源蔵は地元の教育関係者の協力を得ながら、史蹟名勝天然記念物の指定を推進させようと努力し、その結果多くの岩石標本が、当時文部省から史蹟名勝天然記念物調査委員に委嘱されていた脇水のもとに委ねられた。

キーワード:脇水鐵五郎、岩石標本、鳥羽源蔵、三浦春雄、名勝・天然記念物

本州中部域でのカマアシムシ類の土中での深度分布(英文)

中村修美
61-66

要 旨 埼玉県皆野町の蓑山で、各季節に深さ30cmまで5cmごとの6層で採集を行い、カマアシムシ類の土中での深度分布を調査した。カマアシムシとトゲナシウダガワカマアシムシは冬季に地中深い層へ移動したが、アサヒカマアシムシは明瞭な季節的な変動を示さなかった。冬季の地中への移動は地表面の冷却を避けるためであろう。種間での季節的な移動の違いは、各種の寒さへの耐性の違いによるものであろう。

キーワード:カマアシムシ属、分布範囲、季節変化、冬の寒さ、耐寒性

佐渡の大型陸棲貧毛類(ミミズ)相~新潟本土と比較して

南谷幸雄・丹羽 慈・本間航介・金子信博
67-78

要 旨 佐渡とその近接した本州側の大型陸棲貧毛類(ミミズ)相を比較するため、佐渡を含む新潟県全域でミミズの採集を行った。佐渡5地点、本土10地点から、既知種として同定することが出来なかった9種を含む2科23種を採集した。このうち、既知種2科7種は新潟県のみならず北陸地方初記録である。本調査結果を合わせると、新潟県産のミミズ既知種は3科20種である。特徴的な分布パターンを示した種は本土にのみ出現したユノシマミミズ、佐渡にのみ出現したアオキミミズの2種であった。佐渡の固有種と考えられるものは、未記載と考えられる1種のみであった。このため、佐渡と本土が隔離されてから種分化が起こり多数の固有種が進化するほどの長時間は経ていないことが示唆された。

キーワード:ミミズ相、フトミミズ科、ツリミミズ科、佐渡、生物地理

短報

北本市デーノタメ遺跡からホンシュウコバネダニ Diapterobates variabilis honshuensis(Aok, 1982)の発見

楡井 尊・中村修美・青木淳一
79-80

キーワード:ホンシュウコバネダニ、縄文時代中期、レフュージア、花粉分析

木登りをするミミズについて

南谷幸雄・辻井隆昭
81-84

キーワード:フトミミズ科、木登り行動、キクチミミズ、Duplodicodrilus schmardae(Horst, 1883)、大阪市西区、靱公園

埼玉県のカワモズク属(淡水紅藻)の分布

原口和夫
85-90

キーワード:カワモズク、湧泉、淡水紅藻、分布

奥武蔵の地衣類(予報)

田留健介・吉田考造
91-94

キーワード:埼玉県、奥武蔵、地衣類、フロラ、カバイロイワモジゴケ、Graphis

埼玉県熊谷市小島におけるヒナコウモリ Vespertilio sinensis 個体群の周年動態

大沢啓子・佐藤顕義・大沢夕志・勝田節子
95-100

キーワード:ヒナコウモリ、出産哺育、越冬、熊谷市、新幹線、建造物、集団

埼玉県におけるヤマコウモリ(Nyctalus aviator)の越冬生態 1.上越新幹線における分布と季節移動

佐藤顕義・大沢夕志・大沢啓子・勝田節子
101-108

キーワード:ヤマコウモリ、新幹線、越冬、移動、人工物

資料

埼玉県に寄贈された、新書『牧野植物図鑑の謎』に関する資料

碓井 徹
109-112

キーワード:牧野富太郎、植物図鑑、謎、村越三千男、俵浩三

第6号

第6号(2012年3月30日発行)

原著論文

飯能市阿須の下部更新統,仏子層の花粉化石群集

楡井 尊
1-10

要 旨 飯能市阿須の「阿須の切り通し」に露出する仏子層について,花粉化石群集を明らかにした.古植生は,メタセコイア属,ハンノキ属を主体とし,一部ヤチダモをともなう湿地林が存在し,後背地にはトウヒ属,ブナ属などからなる冷温帯程度の針広混交林が広がっていた.花粉化石群集には,絶滅属のイヌカラマツ属,アケボノスギ属,コウヨウザン属,キクロカリア属,ハリゲヤキ属をともなう.キクロカリア属は,発芽孔の数の違いと肥厚部の外壁の厚さで,クルミ属-サワグルミ属と区別した.

キーワード:更新世,飯能市阿須,花粉分析,古植生,古環境,キクロカリア属

関東山地の三波川帯,釜伏山に産出する超苦鉄質岩の岩石記載

小林 まさ代
11-17

要 旨 釜伏山超苦鉄質岩体は,関東山地の三波川結晶片岩中に産出する蛇紋岩体である.これまでに詳細な岩石学的研究は行われておらず,本研究では基礎データの収集を目的に,本岩体北部の岩石記載を行った.研究は薄片観察を中心に行い,必要に応じて粉末X線回折法およびEDS定性分析を用いた.その結果,本地域の釜伏山超苦鉄質岩体はほぼ完全な蛇紋岩であるものの,初生鉱物の仮像の有無や蛇紋石が示す組織の違いにより5タイプに分類できる.これらの蛇紋石組織は,釜伏山超苦鉄質岩体が三波川変成作用や変形作用の影響を受けた結果,形成された.

キーワード:蛇紋岩,釜伏山,蛇紋石組織,三波川帯,変形作用

山中地溝帯のアーチおよびブロック構造の成因に関する一考察

足立久男・小泉 潔
19-36

要 旨 山中地溝帯の白亜系は,東西にのびた狭長な分布を示す.志賀坂峠付近を頂点とし,東西両方向に沈むアーチ構造をなしている.西側へはゆるやかに沈下するが,東側へは40°くらいで傾く非対称アーチを形成している.また,アーチ構造は北北東‐南南西~北東‐南西方向と南北方向の2つのタイプの胴切り断層によってブロック化されている.このアーチおよびブロック構造は,とくに中期中新世中後期~後期中新世にかけて生じた関東山地中央部のマグマ性の隆起運動と密接な関係をもって形成されたものとみられる.本論文では,関東山地およびその周辺地域における新生代,とりわけ後期中新世の造構‐火成活動の特徴をのべ,続いて山中地溝帯のアーチおよびブロック構造の特徴とその成因について論じた.

キーワード:フォッサマグナ,山中地溝帯,後期中新世,火山性陥没盆地,ブロック構造

埼玉県長瀞町の大型陸棲貧毛類相

南谷幸雄・中村修美・金子信博・石塚小太郎・渡辺弘之・伊藤雅道
37-42

要 旨 埼玉県長瀞町内の荒川の両岸で,大型陸棲貧毛類(ミミズ)の採集を行った.合計6地点から,既知種として同定することが出来なかった2種を含む3科18種を採集した.このうち,ニレツミミズやタンショクミミズ,ノラクラミミズ,シマチビミミズ,バライロツリミミズの5種は埼玉県初記録であった.本調査の結果をあわせると,埼玉県産の大型陸棲貧毛類既知種は合計2科21種である.

キーワード:ミミズ相,フトミミズ科,ツリミミズ科,地理的障壁,生物地理,埼玉県立自然の博物館

脇水鐵五郎が明治大正期の地学教科書に紹介した化石

田口聡史・福島美和
43-50

要 旨 脇水鐵五郎「岩石標本」のうち, 日本の古生物学発祥地として有名な美濃赤坂石灰岩に関連する標本61点の全体像について概要を報告する.その中には脇水が明治大正期の地学教科書に掲載したウミユリ化石の原図となった標本が3点存在する. 脇水が掲載するに至った背景には, 神保小虎の指摘が要因になったと考えられる. また, 脇水鐵五郎「岩石標本」を収納していた標本箪笥にも, 今回初めて地質学史的な価値が認められた.

キーワード:脇水鐵五郎, 美濃赤坂金生山, ウミユリ化石, 明治大正期, 地学教科書

短報

樹幹に生育する地衣類から得られたカマアシムシ類

中村修美・大西 純
51-52

要 旨 エゾイタヤの樹幹に生育する地衣類(カラタチゴケ)から,ヨシイムシ2個体(1メス,1第一幼生)が得られた.このような環境から出現したことは注目される.

キーワード:ヨシイムシ,カラタチゴケ,エゾイタヤ

埼玉県内におけるヒナコウモリ Vespertilio sinensis の越冬事例

大沢夕志・石井克彦・大沢啓子・奥村みほ子・碓井 徹・佐藤顕義
53-58

キーワード:ヒナコウモリ,越冬,長瀞町,寄居町,建造物,集団

秩父帯北帯,埼玉県横瀬町芦ヶ久保~飯能市上名栗から産するジュラ紀放散虫化石

松岡 喜久次
59-68

キーワード:ジュラ紀放散虫化石,上吉田ユニット,住居附ユニット,横瀬町,秩父帯北帯

第5号

第5号(2011年3月発行)

総 説

地域の自然史系博物館が生物多様性保全に果たす役割-埼玉県立自然の博物館の事例を中心に-

須田 大樹・中村 修美
1 – 11

要 旨 従来おこなわれてきた資料収集,調査研究,展示,教育普及といった自然史系博物館における基本的な活動は,地域の生物多様性保全に大きく貢献できる可能性をもっている.また,地域の自然を長年見続けてきた専門家の立場から,様々な機関から協力を求められたり,シンクタンクとしての機能を果たしたりする場面もある.生物多様性の価値が広く認識されつつあるこれからの時代,自然史系博物館の存在意義の一つとしてこれらの役割はますます重要になってくると考えられる.埼玉県立自然の博物館の事例を中心に,地域の自然史系博物館の活動がいかに生物多様性と関連が深く,また重要な役割をもっているか論じた.

キーワード:生物多様性,自然史系博物館,博物館学

秩父の大地の魅力-「秩父まるごとジオパーク」へ向けたテーマとストーリーの提案-

本間 岳史
13 - 33

要 旨 筆者は,秩父地域へのジオパーク導入に向けた取組を支援する立場から,ジオパークに関する全国各地の動向を整理し,秩父地域のジオサイト候補地などについて,一つの試案を提起した(本間,2010).しかし,活動の指針とすべきジオパークのテーマやストーリーの構築はまだ不十分であったため,その後,筆者は,ジオサイトを見直すとともに,秩父地域のテーマやストーリーについて検討を加えた.
本総説では,秩父地域のジオサイトを空間的視点から,ジオポイント,ジオサイト,ジオサイト群の3つの階層に分類し,それぞれの階層におけるテーマを設定した.さらに,これらのテーマを地質時代の時間軸に沿って整理して,「秩父まるごとジオパーク」のストーリーの骨子を提起した.

キーワード:秩父の大地,秩父まるごとジオパーク,ジオサイト,階層構造,テーマ,ストーリー

原著論文

埼玉県のカマアシムシ類

中村 修美
35 - 41

要旨 これまでの既知記録を含めて埼玉県のカマアシムシ類をまとめ,4科16属33種を記録した.その多くは,日本の暖温帯―温帯を主たる分布域とする種であった.2地点でウエノカマアシムシB型とC型の共存が認められた.

キーワード:カマアシムシ相,カマアシムシ科,ヨロイカマアシムシ科,ヒメカマアシムシ科,クシカマアシムシ科,ウエノカマアシムシB型・C型,共存.

埼玉県におけるカバノキ属9種の分布と地形・地質との関係

指村 奈穂子・須田 大樹・岩田 豊太郎
43 - 52

要 旨 埼玉県には9種のカバノキ属樹木が分布し,このうち2種は絶滅危惧種に指定されている.
本研究では,この9種を対象とし,その分布と地形や地質との関係を整理することで,埼玉県の生物多様性の成り立ちを明らかにすることを目的とした.
各種の生育地を分析した結果,高い標高にネコシデ,ダケカンバ,ジゾウカンバ,低標高にオノオレカンバ,ヤエガワカンバが分布していた.さらに,石灰岩地にはチチブミネバリが,傾斜が急なところにミズメやウダイカンバが,緩やかなところにヤエガワカンバが,凸地形にオノオレカンバが,それぞれ特徴的に分布していた.
カバノキ属の分布には,多様な地質,複雑な地形,気候が影響していた.周極第三紀要素の冷温帯の遷移先駆種群であるカバノキ属樹種は,わが国に南下侵入し,石灰岩地,亜高山気候,強風地,急傾斜地,崩壊地,氾濫地などの立地条件ごとに特化・分化したと推察された.

キーワード:カバノキ属,地質,地形,分布,GIS

金雲母-燐灰石岩の地質学的記載とその成因

関根 一昭
53 - 74

要 旨 関東山地の秩父累帯北帯から金雲母と燐灰石を主要鉱物とする砂岩状の組織をもつ岩石が見出され,これを金雲母-燐灰石岩と呼ぶ.金雲母-燐灰石岩の原岩は海洋性のアルカリ岩の一種と考えられ,付加体においてチャート,石灰岩,緑色岩の海洋性岩石および砂岩や泥岩の陸源物質と共存する.
金雲母-燐灰石岩は付加体の浅部において,その原岩が高間隙水圧下で破砕,粘土化される過程で形成され,金雲母と燐灰石を主用残存鉱物とする砂岩状の組織を呈するようになった.金雲母-燐灰石岩と共存するチャート角礫岩も同様の過程で形成されたと考えられる.一部の金雲母-燐灰石岩は高間隙水圧下で流動化し,ブロックに対して基質的役割を演じ,層状チャートに対してインジェクションを引き起こした.

キーワード:秩父帯,金雲母,燐灰石,破砕,粘土化,流動化

「脇水鐵五郎」岩石標本-その全体像と大学教育への活用-

田口 聡史・福島 美和
75 - 90

要 旨 かつて国士舘大学文学部地理学教室の所有であった「岩石標本」は,主体をなす1892(明治25)年から1941(昭和16)までの標本群と,約25年間の空白期間を置いた1966(昭和41)年から1973(昭和48)年までの標本群とに大別される.
前半の標本群は帝国大学・東京帝国大学「脇水鐵五郎」,後半の標本群は国士舘大学「文学部地理学専攻科」創設黎明期に帰属を特定できる.今回は、前半の「脇水鐵五郎」岩石標本の全体像について,主に標本ラベルの種類・採集時期と地域・採集者等の概略を数量的に報告する.また,同標本の国士舘大学での活用や,後半の国士舘大学の標本群についてもふれる.

キーワード:岩石標本, 脇水鐵五郎,東京帝国大学,国士舘大学,山口俊策

短 報

埼玉県入間市に進入した偶蹄目

重昆 達也
91 - 96

キーワード:イノシシ,ニホンジカ,カモシカ,埼玉県,入間市,加治丘陵

埼玉県新産のクルマシダ

植田 雅浩・石渡 孝行
97 - 100

キーワード:埼玉,シダ植物,新産種,クルマシダ,新北限地

埼玉県深谷市上部中新統, 楊井層からオオミツバマツ Pinus trifolia Miki 球果化石の発見

楡井 尊・秋山 高宏
101-104

要 旨 深谷市の荒川河床の上部中新統楊井層から,Pinus trifolia Mikiの完全な球果化石を発見した.関東地方では初めての確実な記録となる.本種は東海地方の上部中新統~鮮新統で多産するが,それ以外では記録が極めて少ない.この発見は,上部中新統の古植生・古環境を考える上で重要である.

キーワード:Pinus torifolia Miki, 楊井層,上部中新統,球果化石,深谷市

資 料

埼玉県長瀞町におけるアカマツ Pinus densiflora 球果の食痕調査

奥村 みほ子
105–106

キーワード:長瀞町,アカマツ林,球果,食痕,リス科

埼玉県大里郡寄居町におけるアライグマPyocyon lotorの観察例と分布状況

石井 克彦・藤田 宏之
107-110

キーワード:アライグマ,埼玉県大里郡寄居町,観察,分布

埼玉県秩父市大滝,秩父帯南帯の両神ユニットから産出した放散虫化石

松岡 喜久次
111-114

キーワード:ジュラ紀古世,放散虫化石,両神ユニット,秩父帯南帯,秩父市

第4号

第4号 (2010年3月発行)

総説

“日本地質学発祥の地”秩父とジオパーク -ジオサイトとジオツーリズムに関する一試案-

本間 岳史
1 - 24

要 旨 現在、ヨーロッパと中国を中心に19か国64地域が世界ジオパーク(GGN)に認定され、日本国内でも2008年に7地域、2009年にさらに4地域が日本ジオパーク(JGN)に認定された。秩父地域でも2009年に申請したが、組織作りや活動実績が不十分であり、テーマが明確でないなどの理由で認定されるに至らなかった。筆者は、秩父地域は豊富な地質遺産を有し、“日本地質学発祥の地”と称せられることなどから、ジオパークにふさわしい潜在的条件を備えていると考えている。本総説では、ジオパークの意義、これまでの経過や国内各地の動きなどに関する知識・情報を整理し、秩父に焦点を当てて、テーマ、ストーリー、ジオサイトなどについての試案を提起した。

原著論文

埼玉県鴻巣市滝馬室付近の完新世花粉化石群集からみた古環境変遷

楡井 尊 ・ 小林 健助
25 - 36

要 旨 鴻巣市滝馬室付近に分布する完新統の黒色有機質シルト層について花粉分析を実施し、古植生と古環境について検討した。その結果、4帯3亜帯の地域花粉帯を設定した。古植生と古環境は、下位のKON-D帯ではコナラ亜属が優勢な落葉広葉樹林で、下部のKON-D3亜帯では一部にアカマツの二次林が成立し、開けた草地が広がっていた。KON-C帯ではコナラ亜属が優勢だが、アカガシ亜属の常緑広葉樹林、スギ属が増加した。KON-B帯では、アカマツ二次林が拡大したが、広葉樹林は減少し、開けた草地が拡大した。KON-A帯では、アカガシ亜属の常緑広葉樹林が大きく減少し、コナラ亜属などの落葉広葉樹林も減少するいっぽう、カバノキ属が増加した。
古植生・古気候の変遷は、基本的に関東平野における完新世の植生史と一致するが、クリの出現率の低いこと、約5,300yBPに一時的なアカマツ二次林の拡大が推定されたことが異なる。今回、シオジ(Fraxinus platypoda)の花粉化石を初めて同定した。

キーワード:完新世、鴻巣市滝馬室、花粉分析、古植生、古環境

岩石標本から観た脇水鐵五郎の欧米留学

田口 聡史 ・ 福島 美和
37 - 44

要 旨 「風景地質学者」脇水鐵五郎は、東京帝国大学農科大学助教授時代の大正初期、欧米に留学している。今回の調査により、その時期と地域に一致する岩石標本49点を発見した。脇水の採集した岩石標本を基に、ドイツ・イタリア・スイス等での地質巡検行程の概要を復元することができ、大正初期の日本地質学史の一端を具体的に提示する。

キーワード:脇水鐵五郎、欧米留学、岩石標本、大正初期、東京帝国大学、比企忠

関東山地北縁、上部中新統・山崎層(新称)とそのFT年代

小池 美津子 ・ 大平 寛人 ・ 橋屋 功
45 - 54

要 旨 関東山地の北側の中新統の前橋-熊谷堆積盆地では、東部の埼玉県域で、これまで知られていなかった上部中新統上部の地層がFT年代から認められ、山崎層と命名された。山崎層は、同堆積盆地の南帯のもっとも北側に分布し、これまで中新統最上部層とされていた諏訪山層(児玉地域)と楊井層(比企地域)に整合にかさなる。山崎層は礫岩層を主とした地層で、安山岩の大~巨礫を多量に含む。堆積相から河川成(扇状地?)堆積物と考えられる。山崎層に挟まれる安山岩~デイサイト質の厚さ5m近くの三ヶ尻凝灰岩層のFT年代は6.5±0.4Maを示し、このことから群馬県西部の秋間層下部(上部中新統上部)に対比される。前橋-熊谷堆積盆地南帯においては、西部の群馬県地域では、秋間層下が上部中新統下部の板鼻層を不整合におおい、隆起運動にともなう陸上火山活動が起こったが、同盆地東部の埼玉県域では後期中新世内に堆積作用の中断はみられない。

キーワード:上部中新統、FT年代、山崎層、三ヶ尻凝灰岩層、前橋-熊谷堆積盆地

荒川低地北部の地形発達 -利根川の流路変遷を中心として-

清水 康守 ・ 駒井 潔 ・ 小林 健助 ・ 小川 政之 ・ 堀口 萬吉 ・ 金子 直行 ・ 加藤 智江
55 - 70

要 旨 関東平野の西部にある荒川低地北部には、自然堤防がよく発達している。この自然堤防の間には流路跡が明瞭にみとめられる。自然堤防はその分布と切り合いから、3時期に区分され、各々、古期・中期・新期と名付けた。この地域の地質と考古遺跡の分布の検討から、1.流路跡はかつての利根川のものと考えられる。2.流路跡の形成時期は、古期が縄文時代前期、中期が縄文時代中期、新期は縄文時代後期と考えられる。以上の結論からこの地域の利根川の流路変遷を中心とした地形発達史を考察した。

キーワード:完新世、関東平野、自然堤防、流路跡、考古遺跡

短 報

日本新産品種ミョウテンジカワモズク(新称)、Batrachospermum gelatinosum (L.) De Candolle f.
spermatoinvoulucrum Vis et Sheathとその生息地について

須貝 郁子 ・ 熊野 茂
71 - 76

キーワード:カワモズク、日本新産品種、湧水

研究発表会抄録

77 - 80

キーワード:ジオパーク、日本地質学発祥の地、秩父、ジオサイト、テーマ、ストーリー

第3号

第3号 (2009年3月発行)

原著論文

長野県北西部神城盆地の更新世末〜完新世の花粉化石群集と古環境変遷

楡井 尊
1-10

要 旨 長野県北西部神城盆地における更新世末〜完新世の花粉化石群集を明らかにし,3帯8亜帯の地域花粉帯を設定した.その結果,更新世末の古植生は,Pinus (Haploxylon), Picea, Tsuga などの亜高山帯針葉樹林を主体とし,山地帯の落葉広葉樹も一部存在していたことが判明した(KAM-3 帯).更新世最末期には Quercus (Lepidobalanus) を主体とし Fagus を伴う落葉広葉樹林が主体となり,古気候の温暖化は
進行したが短周期の寒冷化も認められる(KAM-2 帯).完新世には Pinus (Diploxylon),Alnus,Ulmus-Zelkova が増加し,亜高山帯要素はほとんど出現しなくなる.上部では降水量が増大し,人類による植生破壊の影響が増加した(KAM-1 亜帯).分析地点の古植生は,日本海側要素である Fagus が北部に比較して少ないことと,Picea がある程度出現することから,内陸的要素が強いことになる.

キーワード:長野県北西部,神城盆地,更新世末〜完新世,花粉分析,古植生変遷,気候変動

秩父盆地北東部の中新統の生痕化石とそれらの古環境

小幡 喜一
11-32

要 旨 秩父盆地北東部の荒川・赤平川・蒔田川ぞいに露出する中新統を調査し,17 属20 種の生痕化石を発見し,これらを記載した.
白沙層には多くの生痕化石がふくまれ,堆積時の環境は前浜〜外浜を示し,最上部はやや深い外浜〜沖浜を示す.
子ノ神層の基底には固結した硬質基層や半固結の締質基層の特徴をもった生痕化石がある.これらは富
田層堆積期以降,同層中のノジュールが固結し,泥が半固結状態になってから隆起(海退)・浸食を受け,海食台や内湾になったことを示す.主部の凝灰質砂岩には沖浜を示す生痕化石がふくまれ,急激な海進を示している.
秩父町層にふくまれる生痕化石は外浜〜沖浜を示し,蒔田川砂岩礫岩部層から産出した Dactyloidites ottoi は堆積盆東縁部に臨海扇状地の存在を示唆する.
子ノ神層・秩父町層の生痕群集には,日和見生痕種が複数ふくまれ,堆積作用が急速に進んだことを示している.

キーワード:生痕化石,堆積環境,古固結度,中新統,秩父盆地

秩父盆地の中新統奈倉層から発見されたウニ類化石 Echinolampas yoshiwarai とその古環境

小幡 喜一
33-40

要 旨 埼玉県秩父盆地で初めて,その東縁部,秩父市蓼沼の荒川右岸および皆野町大浜の荒川右岸に露出する中新統秩父町層群奈倉層から Echinolampas yoshiwarai ヨシワラマンジュウウニ化石が発見された.
E. yoshiwarai は台湾北部〜北海道南西部の下部中新統上部〜中部中新統下部,および伊豆〜南関東の上部中新統〜鮮新統から報告されており,熱帯〜亜熱帯の浅海に生息したものと考えらている.本種の発見により奈倉層堆積期の温暖な浅海環境が示唆され,化石含有層の堆積相などからは,秩父堆積盆地東縁部に小規模な臨海扇状地が存在したことが推定される.

キーワード:Echinolampas yoshiwarai, ヨシワラマンジュウウニ化石,秩父盆地,中新統,奈倉層,古環境

脇水鐵五郎の帝国大学卒論,「陸前大島」岩石標本の発見

田口 聡史・福島 美和
41-48

要 旨 脇水鐵五郎は,明治から昭和初期にかけて活躍した地質学者である.晩年は地質学に基づく風景論を展開した.平成20年度,埼玉県立自然の博物館は資料調査の過程において,脇水鐵五郎に関連する岩石標本を発見した.その中で最古の採集日を記録した「陸前大島」岩石標本は,約120年前の帝国大学卒業論文証拠資料であることが判明した.

キーワード:脇水鐵五郎,鳥羽源蔵,岩石標本,明治25年,陸前大島,帝国大学卒論

短 報

埼玉県小川町,秩父帯北帯のチャート・珪質岩ユニットから産出したジュラ紀新世放散虫化石

松岡 喜久次
49-54

キーワード:秩父帯北帯,チャート・珪質岩ユニット,ジュラ紀新世,放散虫化石,珪質泥岩,小川町

埼玉県から出現したヌマガエルの分布

菊池 久雄・松本 充夫
55-62

キーワード:埼玉,ヌマガエル,分布,荒川,利根川

埼玉県からアズキガイを確認

松本 充夫
63-66

キーワード:埼玉,陸産貝,アズキガイ

埼玉県におけるオオノスリ(タカ目タカ科)の初記録

新井 浩二・碓井 徹
67-68

キーワード:オオノスリ,埼玉県,初記録

埼玉県新産のベニシュスラン(ラン科シュスラン属)について

須田 大樹・植田 雅浩・四分一 平内・石渡 孝行
69-72

キーワード:ベニシュスラン,地生ラン,埼玉県,新産地,稀少種,レッドリスト

第2号

第2号 (2008年3月発行)

原著論文

『秩父始原層 其他』に詠まれた岩石・鉱物 −−宮沢賢治の畏友 保阪嘉内の歌稿ノートから−−

本間岳史
1-18

要 旨 宮沢賢治の“心の友”とも評される保阪嘉内は,大正6年7月,盛岡高等農林学校の二年生の時,秩父地質見学旅行に参加し,その時に詠んだ296首の短歌を『秩父始原層 其他』と題するノートに書き残した.筆者は,これらの短歌のなかから,岩石・鉱物・地質現象等が登場する154首を抽出し,それらの事象を分類・整理して学術的な説明を加えるとともに,当時の巡検案内等も参照してそれらの産出地などについて考察し,嘉内らの足跡をたどった.また,岩石・鉱物・地質現象等の擬人化や性格づけから,嘉内の秩父に対する想い,これらの事象に関する知識や好みを考察し,嘉内の自然科学者としての側面と,“文学の素養のある理科系の人間が歌を詠む学際的な効果”を浮き彫りにした.

キーワード:宮沢賢治,保阪嘉内,秩父地質見学旅行,短歌,岩石・鉱物・地質現象

北関東におけるフモトミズナラの葉・堅果・殻斗の形態について

須田大樹・星野義延
19-26

要 旨 北関東と東海の低標高に隔離分布するフモトミズナラはコナラの亜種とされ,その形態は高標高に生育するミズナラや沿海州などに分布するモンゴリナラと類似するとされる.本研究では,北関東においてフモトミズナラの葉・堅果・殻斗を採集し形態を計測した.フモトミズナラ・ミズナラ・モンゴリナラの葉の形態を比較したところ,フモトミズナラの葉は側脈数,鋸歯形,葉長と葉身幅の比などの点で,ミズナラよりも大陸のモンゴリナラと類似していた.堅果・形態についてもミズナラとは明らかな違いがあり,モンゴリナラに関する諸文献の記述と共通点が多かった.コナラとは,葉柄の長さ,葉裏の毛の有無,堅果の縦横比,殻斗の鱗片の高さなど多くの点で異なっていた.

キーワード:ブナ科コナラ属,モンゴリナラ,ミズナラ,コナラ,分類,東海丘陵要素

短報

鴻巣市滝馬室付近の完新統黒色有機質シルト層の14C年代

楡井 尊・小林健助
27-30

要 旨 荒川中流,鴻巣市滝馬室の御成橋付近で,黒ボク土に類似した顕著な黒色有機質シルト層を見いだした.放射性炭素年代を測定したところ,黒色有機質シルト層は約6300yrBP〜約1980yrBP(縄文時代前期前半〜弥生時代後期)に堆積したことが判明した.堆積速度から,埋没した古土壌の可能性が示唆された.

キーワード:荒川低地,完新統,黒ボク土,黒色有機質シルト層,放射性炭素年代

埼玉県ときがわ町、御荷鉾ユニットの砕屑岩から産出したジュラ紀新世放散虫化石

松岡喜久次
31-36

キーワード:ジュラ紀新世,放散虫化石,砕屑岩,御荷鉾ユニット,ときがわ町

埼玉県新産4種のシダ植物

植田雅浩・石渡孝行
37-40

キーワード:埼玉,シダ植物,新産種,マツザカシダ,エンシュウベニシダ,ナガバノイタチシ     ダ,ミヤマノコギリシダ

埼玉県初記録のトンガリササノハガイ

金澤 光・松本充夫
41-43

キーワード:埼玉 淡水貝 トンガリササノハガイ

第1号

第1号(2007年3月発行)

原著論文

比企丘陵の中部中新統下部、荒川層基底部の乱堆積層

比企団体研究グループ(武井けん朔・橋屋 功・小池美津子・小澤良広・本間岳史・佐藤和平・柿沼俊之・橘伸一朗)
1-20

要 旨 荒川河岸に露出する模式地の荒川層について,基底部にみられる厚さ約100mの乱堆積層を記載,検討した.この乱堆積層には,泥岩礫の多い礫質泥岩,タービダイト,泥岩礫岩,岩塊,スランプ褶曲,などがみられ,全体として堆積物重力流によって形成された,とみられる.また,荒川河岸から比企丘陵南縁部において,荒川層の基底部にはあちこちで乱堆積層がみられることがわかったので,これらを全体として乱堆積帯とみることができる.荒川層基底の乱堆積帯の形成は,下位の小園層の堆積期から荒川層の堆積期に移るとともに,堆積場が移動し,その沈降量が大きくなり,しかも比企丘陵の南に隣接する関東山地北東縁部が隆起したことに関連している,と考えられる.

キーワード:中新統,比企丘陵,荒川層,乱堆積,礫質泥岩,泥岩礫岩,中新統の岩塊,長昌寺礫岩,越畑凝灰岩

関東山地北縁部児玉地域の中新統

小池美津子・橋屋 功・堀内誠示
21-41

要 旨 関東山地北縁部の児玉地域の中新統を再検討した.中新統分布地域は,北から生野山−諏訪山地帯,木部−韮ケ谷戸地帯および白石−上郷地帯の三地帯に区分でき,各地帯で中新統の分布や構造が異なる.中新統は下位より小園層,児玉層,生野層および諏訪山層に区分でき,浮游性微化石や貝化石および層序的位置から,小園層は前期中新世の終わりから中期中新世のはじめ,児玉層は中期中新世の前期〜中期,生野層と諏訪山層は中期中新世後期〜後期中新世の堆積物と考えられる.中新統の層序や構造は,比企丘陵との関連が深く,小園層は比企丘陵と一連であり,児玉層は荒川層と福田層に,生野層は土塩層に,諏訪山層は楊井層に,それぞれ対比される.

キーワード:児玉地域の中新統,珪藻化石,石灰質ナンノ化石,門ノ沢動物群,塩原型動物群,火砕岩鍵層

狭山丘陵大沢における狭山層の花粉化石群集

楡井 尊・竹越 智
43-50

要 旨 狭山丘陵大沢における狭山層について,初めて花粉化石群集を明らかにした.花粉化石群集から推定される古植生はTsugaを主体とし,Fagusなどの落葉広葉樹を伴う冷温帯程度の針葉樹主体の森林である.火山灰層序と消滅属の出現傾向から,花粉層序学的に大阪層群のメタセコイアC〜D帯に対比される.

キーワード:狭山丘陵, 狭山層,鮮新更新統,花粉化石

短報

埼玉県北部及び隣接地域におけるヌマガエルRana (Limnonectes) limnocharis limnocharisの分布と人為的移入

菊池 久雄・ 松本 充夫
51-56

キーワード:埼玉 ヌマガエル 分布 人為的移入